店長は、笑いながら下がる。
残された私と椋平。
椋平は、まだ不服そうに眉を寄せている。
「椋平。覚えてる?初めて会った時の事」
「ん?」
「椋平が、カフェに来てくれて、通い始めてくれて。それで、初めて話した日の事覚えてる?」
「初めて話した日のこと?」
椋平は首をかしげ視線を上にあげる。
思い出してるのかな。
「椋平が、飯塚六郎の小説を持ってて」
「―――ああ」
思い出したらしい椋平は視線を私に戻す。
私はフフッと笑って話を続けた。
「私、自分の好きな作家さんを椋平も好きなんだって思ったら嬉しくてつい声かけちゃったんだよね」
「ああ・・・」
「そこから、私たちは始まったんだ。でも、椋平覚えてなかったんだ。私にとっては運命的な出会いだったのに」
すぐに出てこなかったみたいだし。


