「奥さんに、ばれたかもしれない」




そう、友花から連絡が来たのは1週間ほど前だった。
電話の向こうの友花は泣いていて、錯乱状態だった。


友花に会いに、家の近くまで言ったら少しは落ち着いていた友花が泣き腫らした顔で待っていた。




「椋・・・」

「なにしてんだよ・・・」




友花とは、数少ないお互いに気心知れた親友のようなものだった。
親友と呼べる人間が少ない俺にとっては、貴重な存在だ。

その昔、一度だけそう言う関係になったことはあるがすぐに終わった。
親友という位置づけが一番しっくりくるのだとそれからは、まるでその過去がなかったようにいい関係を続けていた。



「ほんと・・・なにしてるんだろう・・・」




吐き出すように切なげに笑う。
友花は、報われない恋愛をしていた。


既婚者の会社の上司。
所謂不倫だ。


報われないことをわかっていて、想いを重ね、離れられないままに今、相手の奥さんにばれそうになってうろたえている。


自業自得。
友花はそう言って笑った。