「夏目先輩・・・」
玄関先でこちらを伺うように見上げるのは、会社の事務の後輩である大川えり。
部署が違うからフロアも違い、会社ではあまり会うことはないがここの所無駄に絡んでくる。
女を表におおっぴらに押し出したようなキャピキャピした仕事のできない女。
正直、受け付けないタイプだ。
会社では、外面よく過ごしている俺は、例え気に食わないこの女でもむげにはできない。
会社で面倒なことになりたくない。
「・・・大川?どうしたんだ?」
当たり障りなく尋ねる。
そもそも、なぜ家を知っているんだ。
こんな時間に尋ねてくること自体非常識だ。
イライラを胸に募らせる。
「友だちと、このあたりで飲んでてぇ。夏目先輩と同じ部署の篠原さんが前ここに住んでるって教えてくれたのを思い出して、来ちゃいました」
「・・・来ちゃいましたって。今、何時かわかってる?」
篠原は、俺の同期の男。
大して仲は良くないが、同期ということで当たり障りのない会話位はする。
そもそもあいつは、大川の事が好きだったんじゃなかったのか?
さしずめ、それを利用されたのか・・・?
面倒くさい。


