「あれは……」

 永愛の様子がおかしいことに気付いたエモリエルも、瑞穂といなみの姿を見つけ息をのむ。

「……永愛さん、あの」

 エモリエルが何かを言いかけた時、永愛の背後に何者かが現れた。

「エモリエル、悪あがきはもうその辺で終(しま)いだ」

 それは、魔術で姿を消した組織の人間だった。エモリエルが永愛の戯術使用を容認したことを重く見た上層部がよこしたのである。

「待って下さい…!彼女に悪気はないのです!」
「そんな話をしている猶予はない。この女は研究材料として捕らえ、最後に処分する」
「そんなっ…!」
「エモリエル。お前もすぐ組織に戻れ。ジョセフ司令官のご命令だ」

 止める間もなく、永愛は後手に拘束され、その者に連れ去られた。

 周囲には花火を楽しむ人が大勢いたが、誰も、永愛と連れ去った者を視認していない。騒ぎにならないよう、あらかじめそういう魔術を施されていたようだ。

「瑞穂君……!」

 周りの目を気にせず、エモリエルは人垣をかき分け瑞穂といなみの元に走った。

「エモリエル…!?」
「今すぐエルガシアに戻ります。あなたも同行して下さい。永愛さんが組織の人間に捕らえられました」
「永愛が…!?」









…8 好きな人の想い人…(終)