琴坂いなみと瑞穂のデート現場を見てしまって以来、永愛は家にこもりきりだった。

 エモリエルとの約束を破っておまじないを使ってしまったので彼に合わせる顔がなかったし、瑞穂のメールにも返事をしていない。

(あの後、何事もなかったかのようにメールで遊びに誘ってくれるけど、もう、瑞穂君とは会えないよ……)

 エモリエルはスマートフォンを持っていないので、三人で遊ぶ時は瑞穂が永愛に連絡を入れる形になっていた。

 しかし、永愛としては、そういった様々な思いがあるので、今までのように彼らと会うことは出来なかった。

 おまじないをした後、少し冷静になって考えたら、瑞穂に対しても悪いことをしたという罪悪感にかられたのである。

(いくらショックだったからって、瑞穂君が彼女と別れるように願うなんて、私は最低だよ。瑞穂君は私がつらい時励ましてくれた人なのに…!)

 エモリエルとの約束を破った自分も、友達の不幸を願った自分も、許せなかった。


 永愛が家に閉じこもっている間、瑞穂とエモリエルは毎日会っていた。

 エモリエルは、ここのところ姿を見せない永愛のことを気にしていた。

「永愛さんとは、まだ連絡が取れないのですか?」
「うん。毎日朝にはメール送るんだけど、返事こない」
「そうですか……。体調不良とかでなければいいのですが。今年の夏は例年より暑いみたいですからね」
「……やっぱり避けてるんだと思うよ、俺のこと」
「それは勘違いだと思いますよ」
「どうして分かるの?気休めならいらない」

 元気のない瑞穂に、エモリエルはためらいがちに切り出した。

「あなたが話してくれるまでこちらからは問わないでおこうと思っていたのですが……。花火大会に行く話をした翌日、永愛さんがここに訪ねてきて、瑞穂君の家を教えてほしいと言ってきました。その時、何があったのですか?」
「何の話?知らない……」
「永愛さんが家に訪ねてきませんでしたか?」
「来てないよ。あの日は家に居たけど、用事で外にも出てたから」
「そういえばそう言っていましたね。あなたと彼女は入れ違ってしまったのでしょうか?」
「かもしれない。そっか……。永愛、俺んちに来てたんだ」

 それきり、瑞穂は思いつめたように黙り込む。