瑞穂に彼女がいることを知って初めて、永愛は自分の正直な気持ちに向き合うことができた。

(おまじないは二度と使わないって決めてたけど……。ごめんね、エモリエル君)

 友達を裏切ってでも、瑞穂のそばにいたいと思った。

(あの笑顔を、優しさを、私にだけ見せてほしい…!)

 この時、かつてエモリエルに言われた言葉が唯一、永愛の支えとなっていた。

『あなたには魔術の才覚があります』

 家に帰り、自室の扉を閉め、おまじないの本を開いた。子供向けではなく、大人も使うという本格的な著書だ。

 《相手に特別な人がいても、確実に自分に振り向かせる》、そういうおまじないだ。

 おまじないに必要な物は、万が一のためにクローゼットで丁寧に管理していた。

「琴坂さんと別れて、私に振り向いてほしい……」

 おまじないというより、黒魔術寄りの方法を、永愛は実行したのだった。









…7 約束破り…(終)