(瑞穂君、私のこと嫌になったんだ……。それに、エモリエル君と二人で行ってって……。私も悪かったけど、なんか突き放された気分だよ)

 瑞穂が何を考えているのか、永愛には分からなくなった。

(ダメだ、私……。自分が悪いのに、瑞穂君を責めるようなことばかり考えてる)

「そうですか。でしたら、永愛さん。花火大会は二人で行きましょうか」
「……そうだね」

 結局、エモリエルと二人で行く約束をした。


 その日の夜、永愛が帰った後、エモリエルは瑞穂の元を訪ねた。

「こんな時間に珍しいね」
「花火大会のことですが、本当に来ないつもりなのですか?」
「……うん。話はそれだけ?」
「永愛さんは納得していないようでしたよ。それに、お菓子作りをするため彼女を自宅に誘ったのは、先に誘った私に対抗心を持ったからでしょう?」
「……それは」
「言われなくても、あなたの気持ちは分かっていますから」

 エモリエルの瞳には、ライバルとして対等に戦いたいという意思がこもっていた。それを分かっても、今の瑞穂は強く出れなかった。

「永愛はエモリエルのことが好きなのかもしれない。だったら邪魔したくない。花火大会は二人で行った方がいいと思った」
「……あなたの目にはそう見えるのですか」
「俺は、最近避けられてるし……。エモリエルと話せれば永愛は嬉しいんだと思う。だったらそれでいい」
「そうですか。分かりました。ソウルメイトのあなたに卑怯なマネはしたくなかったのであなたも誘ったのですが、そういうつもりなら、お言葉に甘えて花火大会の日、私は彼女に告白します。それでは」
「……!」

 いつもの穏やかな顔に笑顔を浮かべ、エモリエルは帰っていった。

「永愛……」

 エモリエルの姿が見えなくなっても、瑞穂は苦しげな顔でしばらくその場に立ち尽くしていたのだった。


 翌日。いつものように三人で集まるのかと思っていたら、その日は瑞穂の都合が悪いということで、遊ぶ話は流れた。

(昨日は気まずいまま瑞穂君と別れたし、このままは嫌だな……)

 もんもんとしていると時間だけが過ぎていく。毎日している瑞穂とのメールも、昨夜は来なかったので、永愛はますます不安になった。

(このまま友達じゃなくなっちゃう?……そんなの、嫌!)

 永愛は、スマホ片手に家を飛び出し、全速力で走った。夏の暑さが容赦なく襲ってくるが、流れる汗もそのままにエモリエルのアパートに向かった。