デリバリーピザしか食べたことのない永愛は、自宅でピザを作るなんて難しそうだと思っていたが、料理好きなエモリエルの教えで何とか作ることが出来た。

「すごい!本当にピザになってる!」
「永愛さん、初めてとは思えないほど上手ですよ」
「そうかな?料理上手なエモリエル君のおかげだよ。この間もおいしいパスタ作ってくれたし」
「一人暮らし歴が長いので、自炊にはこだわるようにしているのですよ。幸い、今回の任務は休暇も多めなのでたくさん練習できますし」
「私も、少しくらい何か作れるようになりたいなぁ。せめてお菓子とか」
「お菓子とは可愛らしいお考えですね。そういうこともわりと好きなので、いつでも教えますよ」
「本当?教えてもらおっかなぁ」

 エモリエルが相手だと、永愛はリラックスして話せた。

 二人の会話を聞いていた瑞穂は、調理器具を洗いながら永愛に言った。

「パンケーキとかクッキーなら俺も作れるよ。今度ウチで一緒にやる?」
「瑞穂君の家で!?」

 突然誘われ、永愛はドキッとした。頬が赤くなってしまう。行きたいのに、恥ずかしくてストレートに返事ができない。

「嬉しいけど……」
「ウソ。パンケーキなんて簡単すぎてつまらないよね。エモリエルの方が本格的なこと教えてくれそうだし、俺、余計なこと言った」

 それきり、瑞穂はよそよそしい感じでピザを食べる支度を整えた。

(どうしよう。瑞穂君に誘ってもらえたの嬉しかったのに、誤解された……)

 永愛は、自分の言動にまた落ち込んだ。今日こそは普通に接するつもりだったのに、やっぱり瑞穂に対しては過剰に緊張してしまう。

 二人の様子を見兼ねたエモリエルが、

「いいではありませんか。お菓子作りも三人で楽しみましょう」

 と、フォローしたが、永愛と瑞穂の返事は心ここにあらずな感じで、その日はずっと、ギクシャクした空気が消えなかった。


「私のせいだ……。絶対そうだよ」

 夕方、家に帰るなり、永愛はベッドにダイブし顔を隠した。泣きたい気持ちでいっぱいである。

「瑞穂君、私のこと感じ悪いって思ってるよね……」

 それを象徴する出来事が、さっき起きた。

 帰り際、エモリエルが、三人で市内の花火大会に行こうと言った。

 永愛はその誘いに乗るつもりだったし、もちろん瑞穂もそうするだろうと思った。エモリエルも永愛と同じ考えだっただろう。

 しかし、瑞穂は少しためらった後、

「ごめん。俺は行けない。二人で行ってきて」

 と返し、うつむいた。