エモリエルと瑞穂が勉強会を開いてくれたおかげで、永愛は夏休みの宿題を4日ですませることができた。これで、残りの夏休みは心おきなく遊び倒すことができる。

 それはいいのだが、永愛にはひとつ困ったことがあった。瑞穂への恋を自覚したせいで、彼の言動をいちいち深く考えてしまうのである。

 前のように彼の顔を見て話せなかったり、話す時も意識してしまい声が裏返ってしまう。

 数日そんな日が続くと、さすがに瑞穂も気にしてこんなメールを送ってくるようになった。

《おはよう。永愛、最近俺のこと避けてる?一緒にいてもすぐ目そらされるし、話しててもぎこちない感じだから。もし何か気分悪くさせるようなことしたなら言って?ごめんね》
《違うよ!瑞穂君と一緒にいるの楽しいし、避けてるつもり全然ないよ》

 永愛は焦り、必死にそう返した。

《だったらいいけど……。悩みがあるなら言ってね。役に立てるか分からないけど、聞くくらいなら出来るから。簡単な運勢占ったりするのも得意だし》
《ありがとう。頼りにしてるね。》

 瑞穂に気にかけられて、とても嬉しい。メールを送るなり、幸せ気分と罪悪感を半々に、永愛は深いため息をついた。

(今は何とかごまかせたけど、こんなこといつまでも続かないよね。瑞穂君は優しいし人のことよく見てるから、ヘタしたら気付かれる……)

 友達だと思っていた頃は素直な自分で接すれたのに、今は全然うまくやれない。

(秋良君と話す時だって緊張はしたけどここまでぎこちなくはならなかったのに、どうして瑞穂君にはこんなにかまえちゃうんだろ……)

 今振り返ると、宗に対する気持ちは恋ではなく憧れだったのだと思う。彼に別れ話をされた時はあんなにショックだったのに、今は瑞穂のことで頭がいっぱいだ。

(こんなこと瑞穂君に知られたら、軽い女だって軽蔑(けいべつ)されるかも……)

 何かあるたび頼ってきたおまじないも今は使えない身なので、告白なんてとてもできない。それだけでなく、瑞穂に軽蔑されるくらいなら友達の関係でいたいと強く思った。

(瑞穂君には嫌われたくない…!)


 今日も、昼からエモリエルや瑞穂と遊ぶ約束をしている。エモリエルの提案で、彼の自宅アパートで手作りピザを作って雑談する予定になっている。

(こういうことにずっと憧れてた。やっと出来た本当の友達、大事にしたい。瑞穂君とも普通に話せるよう気をつけよう!)

 改めて決意し、永愛はエモリエルの家に向かった。