彼らに挟まれそんなやり取りをされる中、集中できるわけなかった。

「あ、あの……。二人とも何かあった?」

 よけいなお世話かもと思いつつ、永愛は思い切って尋ねた。エモリエルと瑞穂は目を丸くして彼女を見る。

 小さく笑み、エモリエルが先に謝った。

「すみません、集中を妨げてしまいましたね

「ごめんね、渡辺さん」
「この通り、私達は仲良しですから」
「んなっ…!」

 エモリエルに手を握られ、瑞穂は慌ててそれを振りほどいた。

「やめてくれる?普通に鳥肌立った」
「ひどいですね。それでもソウルメイトですか?」
「ソウルメイトを都合良く引用しないでよ」

 何とかそこで空気は和み、永愛はホッとした。

 エモリエルと瑞穂に交互に教えてもらいながらやっていくと、たまっていた宿題はスムーズに片付いていく。


「そろそろお昼にしましょうか」

 エモリエルの一声で、永愛はハッとノートから視線を上げた。

「私、いつの間にか集中してた」

 真っ白だったノートも、自分の手も、シャーペンの芯で真っ黒になっている。

「すごい。もうこんなに進んでる…!これなら1週間もかからず終わるかも!」

 感動で、永愛は思わず教科書を抱きしめた。一人だったら、こんなにはかどらなかった。

 そんな永愛を見て、エモリエルはそっと彼女の頭をなでた。

「お疲れ様です。良かったですね」
「エモリエル君っ……」

 エモリエルとの距離が近づき、ドキッとしてしまう。頭をなでるのと同時に、優しくもどこか艶っぽいエモリエルのまなざしが、ざわざわと永愛の心を揺らす。

「クリームパスタを作りました」
「本当?すごい好きだよ、それ」
「そうだと思いました」

 永愛が集中している間に、エモリエルが調理したらしい。

「さっきから何かいい匂いがするなぁと思ってたけど、エモリエル君のおかげだったんだね。ありがとう。私何も手伝えなくてごめんね……」
「いいのですよ。あなたはお客様なのですから」

 二人の世界を壊すように、瑞穂は永愛の手を自分の方に引いた。突然のことに、永愛はビックリしてしまう。