両手を軽くにぎり、エモリエルは真摯な目をした。

「私にとって初恋の味は、きなこ黒みつです」

 その一言で瑞穂は察した。エモリエルが永愛を好きになったことを。

「いつから?作戦がどうのこうの言ってた時は全くそんな気なさそうだったよね」
「自覚していなかっただけだと思います。永愛さんに出会ったその日から、私は彼女に惹かれていたのでしょう」

 最初のキッカケは、魔術の才能が高い彼女に一目置いていた。それだけだった。

「友達や恋人を大切に思う一途で純粋な彼女の心に、私は元々好感を持っていました」
「応援してあげたいけど、今回ばかりはごめん。エモリエルだけじゃないみたいなんだ、渡辺さんを好きなのは」

 夏休みになり、じょじょに強くなる好意。永愛に対する気持ちは友情なのだとばかり思っていたが、そうではないことを、瑞穂は自覚した。

「エモリエルのソフトクリーム食べてる渡辺さん見て、嫌な気持ちになった」
「対抗して自分のを彼女に差し出してましたもんね。……薄々分かっていましたよ、瑞穂君の気持ちは」

 エモリエルは挑むように言った。

「正々堂々勝負しましょう。どんな結果になっても恨みっこなしです。もちろん私は任務とは切り離して彼女のことを考えます」
「彼女に選んでもらえるように、ね」
「瑞穂君。あなたとは性格も好みも似ています。分け合えるものは分け合いたいですが……」
「相手が女の子じゃ、分け合うわけにはいかないしね」

 二人が静かに戦う意思を確認しあっていることを、永愛は知らなかった。









…5 初恋ソフトクリーム…(終)