「どうぞ。おいしいですよ」
「はふっ…!んんっ」

 断る間もなく、永愛はエモリエルのソフトクリームを食べさせらた。抵抗している隙がなかったのである。

「どうですか?甘いのに後味さっぱりでおいしいでしょう?」
「うっ、うん!とってもおいしかった!」

 永愛の声はひっくり返る。

(エモリエル君、平気なのかな?間接キスなのに…!)

 そんなことばかり考えてしまい、正直、味など分からなかった。

「計算か天然か読めないね、エモリエルは……」

 眉間にシワを寄せる瑞穂に、エモリエルはソフトクリームを差し出した。

「瑞穂君も食べますか?」
「いい」

 手のひらをエモリエルに向ける仕草でキッパリ拒否し、瑞穂は自分のソフトクリームを永愛に向ける。その頬はやや赤く、表情はすねていた。

「こっちも食べていいよ」
「えっ!?」

 手渡された抹茶味のソフトクリームを、永愛は拒否できなかった。

(エモリエル君のは食べて瑞穂君のを断るって、失礼だよね!?)

 エモリエルの次は瑞穂。男子の食べたソフトクリームを口にするなんて初めてで、永愛はドキドキした。

(意識しすぎかな?こんなに考えるの私だけ?二人は友達だもん。親切でしてくれてることだし、ここは思い切って…!)

 瑞穂のソフトクリームにそっと口をつけると、ほんのり苦い抹茶の風味が口いっぱいに広がる。

「おいしいっ!抹茶味って初めてだよ」
「でしょ?」

 嬉しそうにはにかみ、瑞穂は永愛のソフトクリームを一口食べた。その時、一瞬だけ瑞穂の肩が触れ、永愛はドキッとした。

「普段あまり食べないけど、ストロベリーもおいしいね」
「よ、よかった!いつも食べる時はイチゴ系ばかりになるんだぁ」
「そうなんだ。ピンク色って女の子って感じするもんね」

 優しいまなざしで見つめてくる瑞穂に、永愛の胸はまた高鳴ってしまう。

(なんか最近、海堂君がさらに優しくなった気がする。元々優しい人ではあるけど……。気のせい?)

 ずっと憧れていた占い師。ファンレターを喜んでくれた人。それだけで好感度は高いのに、性格までいい瑞穂。そんな男子と仲良くなれて幸せ者だと思ったし、永愛の瑞穂に対する好感は高まる一方だった。

(秋良君にキスされそうになったり、女子に責められた時も、海堂君は真っ先に助けてくれた)

 つい先日のことなのに、ずっと昔のことに感じる。