永愛の理解は早かった。元々占いやおまじないといった非科学的なものを信じている彼女にとって、ソウルメイト伝説も「普通にありえること」なのだ。

 一般人ならまず相手にしないような話だし、永愛も初対面の頃はエモリエルの話に疑問を感じていたが、今はまるまるエモリエルの言葉を受け入れていた。親しくなったから受け入れられた、というのもあるかもしれない。

 熱心に耳を傾ける永愛を見つめ、エモリエルは話を続けた。

「ソウルメイトは、物理的距離を縮めることで前世の記憶を夢に見ることができます。瑞穂君と私も、それに成功しました」

 この前、瑞穂はエモリエルの家で夜更かししたと言っていた。その時に二人は、互いに前世の夢を見たのだという。

「人は輪廻転生を繰り返しながら前世の罪や善行の報いを現世で受けます。しかし普通は前世など見えませんから、大半の人は現在の自分の境遇を生まれつきのものだと受け止めます。ですが、ソウルメイトを持つ私達は前世を見ることができるので、前世での行いを反省し現世に生かすことができるのです。そうすることで来世に生まれ変わるこの魂を幸せに導くことができるのです」

 前世で悪いことをすれば、現世でその分の不幸が降りかかる。魂はそうやって成長していく。

 その話を聞いて、永愛は思った。

「じゃあ、もしかして、今まで私に色々悲しいことが起きたのは、この魂を持って前世に生きた人が…生まれ変わる前の私が悪いことをしていたから?」
「心苦しいですが、その可能性は高いです」
「そんな……。前世の私は何をしていたのかな?知りたい……」
「残念ながら永愛さんの前世を見ることはできないのです」
「そっか……」

 気になるが仕方ない。永愛はさらに質問した。

「エモリエル君と海堂君の前世ってどんな感じだったの?」
「大預言者です。預言と予言の能力を使い、城に仕えていました」

 同じ言葉に見えるが、預言と予言は違った。預言とは神や霊の言葉を聞く力で、予言は未来を見る力のことである。

 エモリエルの説明に、永愛は感心のため息をもらした。

「二人とも、すごい前世なんだね」
「現世で瑞穂君に占い師の才能があるのも前世の影響でしょう。私も生まれながらに魔術の才能が高いと判断されました。多かれ少なかれ、前世の能力はこうして引き継がれるようです」
「なんか、想像を超える話だね。でも、なんかいいなぁ。ロマンチック」

 占いやおまじないに頼ってきた永愛には、二人の生まれ持った能力がうらやましかった。

 憧れと尊敬のまなざしでウットリしている永愛に、エモリエルは告げた。

「永愛さんは無自覚でしょうが、あなたにも魔術の才覚があるのですよ」
「そうなの!?エモリエル君、どうしてそんなことが分かるの?」
「魔術師をしていると、人のオーラや魔術の才能を見透かす力が自然と高くなるのです。それで、勝手ながら、永愛さんの能力も見てしまったのです。見てしまったというより、無意識のうちに見えてしまったと言う方が正しいのですが」
「エモリエル君がウソつくとは思わないけど、私にそんな力があるなんて、まだちょっと信じられないな」

 永愛は困惑気味に笑い、自分の両手を見つめた。

「友達を作るおまじないも、結局効力なかったみたいだし……」