「では、行きましょうか」

 男子二人の私服姿はかっこよくて、永愛は少し意識してしまった。

(どうしよう。私、完全に部屋着みたいな格好で来ちゃったよ……。もっと女の子っぽい服着てくるんだった!)

 内心恥ずかしく思っていると、同時に宗のことを思い出した。

(そういえば、秋良君とは休みの日に出かけたことってなかったな。最初から、私のことなんてそんなに好きじゃなかったのかな……)

 気持ちが翳(かげ)る。永愛の気持ちを知ってか知らずか、エモリエルは持っていたペットボトルのお茶を永愛の頬に当てた。ヒヤッとした感覚に、永愛は驚き声をあげる。

「っ冷たい!」
「気持ちいいでしょう?さっきそこの自販機で買ったばかりです」
「エモリエル君もそういうことするんだ……」
「初めてしましたよ。一度やってみたかったのです。青春という感じがしませんか」

 エモリエルはイタズラが成功した子供のように笑った。いつも紳士的で大人っぽい彼の意外な一面を見て、永愛は目を丸めた。おかげで、しんみりした気持ちはどこかへ行ってしまう。

「分かるよ、それ。エモリエル君にもやってあげる!」

 エモリエルの手からペットボトルを取り上げ、永愛は彼の頬にそれを当てた。エモリエルはビックリして声を裏返した。

「つ、冷たいです!想像以上の感覚でした!瑞穂君にもやってあげます」
「いいって!」

 断る声もむなしく、瑞穂はエモリエルにされるがままだった。それを見て、永愛は笑った。

「二人は本当に仲がいいね。なんかうらやましいよ」
「そういえば、永愛さんにはちゃんと話せていませんでしたね。私達の関係を」

 ファミレスに着く前に、エモリエルはペットボトルの中身を飲み干した。それだけ外は暑い。

 ファミレスに着くなり、三人は昼ご飯と共にドリンクバーを注文した。それぞれ好きな飲み物を持って席に戻ると、エモリエルが向かいに座る永愛にさっきの続きを話した。

「瑞穂君と私がソウルメイトだということは、前にもお話しましたね」
「うん、覚えてるよ。ソウルメイトって、前世で親しかった人のことだって、昔、何かの本で読んだことがある」
「それはあくまでその著者の概念であり、私の言うソウルメイトとは少し違うのです」

 ソウルメイトについて、エモリエルは説明した。

「輪廻転生によって、同じ前世の魂を受け継いだ存在。それがソウルメイトです。その概念は、私のいた星も地球も同じ。宇宙全体の法則なのです」
「ということは、エモリエル君と瑞穂君は、前世では一人の人物として存在してたっていうこと…?」
「その通りです」