瑞穂は言った。

「自分のこと悪く言うのは簡単だけど、クセになるからやめた方がいいよ」
「その言葉、パステルで読んだ……!」
「うん。書いたことある。今の渡辺さんに一番言いたい言葉だよ」
「海堂君……」
「渡辺さんはいい人だと思う。俺やエモリエルはそう思ってるから、くじけそうになったらそれを思い出して?」

 瑞穂の言葉を、今度は心から信じられた。

 もう他人なんて信じられないと思っていたのに、不思議と瑞穂の言葉は胸にしみる。それは、彼が尊敬する占い師だからという理由だけではない気がした。

「ありがとう。海堂君のおかげで元気が出たよ」

 永愛はようやく明るい気持ちで笑うことができた。

「やはりこちらにいましたか」

 エモリエルがやってきた。エモリエルはソウルメイトの居場所が分かるアイテムを持っているので、タイミングを見計らいここへ来たようだ。

「エモリエル君…!」
「永愛さん、大丈夫ですか?」
「うん。心配かけてごめんね。もう大丈夫」

 永愛の気持ちが落ち着いたのは瑞穂のおかげだと、エモリエルは察した。

「転入してきたばかりの身でこんなことを言うのは何ですが、夏休みが楽しみですね」
「うん。今年はエモリエルと渡辺さんがいるしね」

 話に乗っかる瑞穂を見て、永愛は幸せな気持ちになった。

「私も、仲間に入っていいの?」
「当たり前」
「もちろんですよ」

 エモリエルと瑞穂の柔らかい表情に、永愛は頬をほころばせた。

(一気にたくさんのものを失くしたけど、それ以上に大切なものが私にはあったんだね)

 夏休みも目前。晴れ晴れした表情で、三人は青空を見上げた。









…3 孤独と味方…(終)