つながれた手の感触がまだ残っているようで、永愛の胸はドキドキしたままだった。しばらくおさまりそうにない。
わざとらしく二人の間に割り込み、瑞穂が言った。
「エモリエル、さっきの何?渡辺さんのこと好きっていうの……。初耳なんだけど」
「瑞穂君はなぜそんなに不機嫌なのですか?友人として好きだという意味で言ったのですが」
「それならそれで言い方があるでしょ?紛らわしい言い方しないでくれる?」
ため息をつく瑞穂を見て、永愛も肩透かしを食らった。
(エモリエル君に好きって言われた時はビックリしたけど、そっか、友達として好きって意味だったんだね。ホッ……)
安心したはずなのに、どこかガッカリもしている。
(そんなわけない!エモリエル君の気持ちが私になくたって寂しくなんてないんだから。私には秋良君っていう彼氏が……)
永愛の思考はそこで停止した。宗のことを好きだと思っていたのに、初めてのキスを拒否してしまった。
(付き合えることになった時はあんなに嬉しかったのに……。どうして?あの時の喜びを今は思い出せない)
永愛の心の内を読んだように、瑞穂は尋ねた。
「……秋良のこと、まだ好きなの?」
尋ねるその声は落ち着いているものの切なげだ。
「……分からない。本当に好きだったのに、急にあんなことされてビックリして。いつもの秋良君じゃないみたいだった……」
立ち止まり、永愛はうつむく。エモリエルはその頭をそっと優しくなでた。
「あなたが無事で本当によかったです」
「エモリエル君……」
優しくされて、永愛の胸は痛くなった。
(秋良君がああなったの、私のせいかもしれない……。エモリエル君や海堂君と友達になりたいって願ったから。欲張ってしまったから。なっちゃんの言う通り、私が間違ってた……?)
だから、今は優しくされるとつらい。
考えていたら涙が出てきた。自分を責める気持ちと、目の前の友達に対する感謝の気持ちで。
「っ……」
「大丈夫ですよ。何があっても私達はあなたの味方です」
「そうだよ。渡辺さんが泣くことない」
瑞穂は永愛にハンカチを差し出した。
頭をなでられ、ハンカチをかしてもらい、ようやく永愛の気持ちは落ち着いた。
通学路。三人で歩く時間は静かなものだったが、時々エモリエルが自国の雑談などをして場を和ませた。
「じゃあ、私はこっちだから」
永愛は言い、分かれ道で二人に笑顔を向けた。
「今日は本当にありがとう。二人がいてくれてよかった」
少し落ち着いた永愛の声音に、エモリエルと瑞穂も安心した。
「お力になれたのなら本当によかったです」
「あんまり考え過ぎないようにね」
ありがとうと言い残し、永愛は二人に手を振った。エモリエルと瑞穂は、彼女の姿が見えなくなるまでその場で見送った。


