今後のことをグルグル考えているうちに、永愛は放課後を迎えた。

 結局、これといった解決策が思いつかず、気ばかり疲れるだけだった。エモリエルや瑞穂に相談しようかと思ったが、内容が内容なだけに、できなかった。


 帰りのホームルームが終わってすぐ、宗が永愛のクラスまでやってきた。

「永愛ちゃん、帰ろ」
「秋良君…!」

 宗にうながされ教室を出て行く永愛の後ろ姿を、まだ残っていた瑞穂とエモリエルは視界の隅で見送っていた。瑞穂は不満そうにつぶやく。

「恋人同士のわりに、なんかおかしいよな。あの二人」
「ヤキモチですか?」
「なんでそうなる?」
「今朝から彼女のことを見過ぎですよ、瑞穂君は」
「唯一の友達なんだから気にして当然でしょ」
「そうですね。ふふふ」

 含み笑いをするエモリエルをジトッとした目で見やり、瑞穂はため息をついたのだった。


 エモリエルや瑞穂に心配されているとは思わず、永愛は宗と並んで渡り廊下を歩いていた。

(なっちゃんに言われたこと、秋良君に直接訊(き)いてみよう!私一人で考えたって分からないし……!)

「あのね、秋良君。ちょっと訊いてもいい?」
「何?」
「秋良君は、私が他の男子と話してるの、嫌?恋愛とかそんなつもりは全くないクラスメイトとかとっ!」

 尋ねる声が震えそうになる。嫌だと言われたらどうしよう?そう考えたら、頭が真っ暗になった。

 宗は、いつもの優しい微笑みを永愛に向けた。

「嫌じゃないよ」
「本当に…?」
「だって、そこまで干渉したら束縛になるから。僕だって用事で永愛ちゃん以外の女子と話すしさ」

 永愛はホッとした。宗本人がこう言うのだから、今後は普通に瑞穂やエモリエルと友達付き合いができる。

 しかし、次の瞬間、平穏を取り戻した永愛の気持ちは乱された。

「永愛ちゃんは僕だけのものってことを態度で示してくれたらの話だけどね」
「え…?」

 言うなり、宗は永愛の両手の自由を奪い、彼女に顔を近付けた。永愛の手からカバンが落ちる。

「秋良君…!?ここ学校だよ?」
「大丈夫だよ。誰もいない。ここは他の教室からも見えないし」

 渡り廊下には、二人の他に人の気配がなかった。でも、永愛は、宗とのキスに拒否反応しか示せなかった。必死に顔をそらし抵抗する。

「秋良君のことは好きだけど、こういうことはまだ早いって思う!だからっ……」
「可愛いこと言うね」
「嫌っ……!」