瑞穂の秘密を知って、永愛の胸はしばらくドキドキが止まらなかった。

「ごっ、ごめん、大きな声出して」
「ううん、俺こそ急にごめん」
「でも、いいの?そんな話して…?」
「渡辺さんだから、話した」

 瑞穂に意味深な視線を向けられ、永愛の胸は高鳴った。

(エモリエル君もだけど、海堂君も優しい人なんだなぁ……。パステルですごくいい記事ばかり書くんだもん)

 最初彼に対して緊張していたのがウソのようだ。秘密を共有したことで、永愛はますます瑞穂に親近感を覚えた。

 穏やかなまなざしで二人を見ていたエモリエルは、教室の時計を見た。

「そろそろ朝のホームルームの予鈴が鳴りますね。席に戻りましょうか」


 楽しげにしている永愛を見てクラスメイト達はざわめいた。中でも、女子生徒達は永愛に厳しい視線を送っていた。


 予鈴を前に席に着いた永愛の元に、奈津がやってきた。

「おはよ!ねえ、永愛って秋良君と別れたの?」
「え…?」

 永愛の胸は重くなった。そう尋ねてくる奈津の顔が明るいからだ。

「別れてないよ」

 笑顔を作り答えると、あからさまにガッカリした声で奈津は言った。

「そうなんだ。海堂達と仲良くしてるから秋良君とは別れたんだと思った〜」
「あの二人は友達だよ。恋とかそういうのじゃないから」
「ふーん?だよねー!永愛ってそういうの似合わないもんねー!」

 からかうように言った後、奈津は声をひそめた。

「でも、秋良君が知ったら気分悪くすると思うよ。彼女が他の男子と仲良くしてたらさ。私もそういうのどうかと思うし」
「そうだよね、ごめん……」
「私に謝られても」

 そっけなく言い残し、奈津は自分の席に戻っていった。

(なっちゃんの言う通りだ。秋良君からしたら、私最低なことしてる。でも、エモリエル君や海堂君とは本当にそんな気ないし……。どうしたら分かってもらえるかな?)

 奈津の言動に引っかかるものはあるが、彼女の指摘に納得しているうちにそれも忘れてしまった。

(なっちゃんがキツイこと言うのは、私のためを思ってのことだよね!悪い風にとらえちゃダメだ!)

 かといって、エモリエル達を避けたりはしたくない。

(どうしよう。このままじゃなっちゃんや秋良君に呆れられる。でも、浮気するつもりなんて全然ないし……)

 もんもんと考える永愛の姿を、エモリエルと瑞穂はさりげなく視界に入れていた。友達の瀬川奈津に何か言われたのであろうことは、彼女達の様子を見て分かった。