「あの二人、いつの間に仲良くなったの?」
「海堂、女の趣味悪っ」

 朝のホームルームが始まる前の教室で連絡先を交換しあう二人の姿は、悪い意味でクラスメイトの注目の的になっていた。

(不思議。今までは人の視線を気にしてたのに、海堂君と仲良くなってから、そういうのあまり気にならなくなってる)

 永愛にとって、瑞穂は大切な友達となった。彼と話せるようになったのは昨日のことだし、お互いのことをまだよく知らないのに、ずっと昔から友達だったような気持ちになる。

 永愛と瑞穂のいるところへ登校したばかりのエモリエルも加わり、話は弾んだ。

「おはようございます、永愛さん。昨日は本当にすみませんでした」
「こっちこそ勝手に帰ってごめんね。あれからおまじないは使ってないから、安心してね」
「永愛さん……」

 永愛からそんな言葉が返ってくるとは思わず、エモリエルは一瞬言葉を失ってしまった。

「エモリエル君…?」
「あ、いえ。私の申し出は一方的で身勝手なものでした。にも関わらず、そのように対応して下さるなんて……。本当にありがとうございます」
「エモリエル君の星が壊れるなんて、嫌だから」
「でも、つらくないですか…?おまじないはあなたの生きる術だったのに」

 エモリエルは眉を下げる。

「つらくないって言ったらウソになるし、もしかしたら今後使いたくなるかもしれない。絶対使わないなんて自信もないよ。でも、今はとりあえず大丈夫そうだよ。パステルがあるから」
「パステルとは、占い雑誌の?瑞穂君から聞きました」
「うん!あの雑誌面白いよね!でも、海堂君も知ってるんだ?男子で知ってる人いないと思ってたから嬉しいよっ」

 パステルの話が通じる相手を見つけて喜ぶ永愛に、瑞穂は耳打ちをした。至近距離での会話にドキドキしたが、永愛は必死にこらえた。

「ほづみうみって知ってる?」
「知ってる!その人のファンだよ、私」
「……それ、俺なんだよ」
「え??」

 照れたように声を絞る瑞穂を、永愛は思わず二度見してしまう。

「海堂君が、ほづみうみ先生…?」
「皆にはナイショな?」

 人差し指を口元に当てはにかむ瑞穂に、永愛はやはり、驚きを隠せなかった。

「えーっ!?」

 おとなしいイメージが定着した永愛の大きな声が教室に響き、彼女はさらにクラスメイト達から注目されることとなった。

 海堂瑞穂は、ほづみうみとしてパステルで記事を掲載している。それが彼の秘密。瑞穂がそのことを人に明かしたのは、学校関係者では永愛が初めてだった。









…2 警告と彼の秘密…(終)