「ねぇ、ここまで言っても分からない?」
「わ、からない、て……なにを、」
「分かってるくせに」
わざとらしく耳元に唇を寄せて囁く桃に、あたしの体は大袈裟なぐらい揺れた。誤魔化しきれない反応に思わずじわりと頬が熱くなる。
もちろん「でも、だって」という反論も頭の中で響いている。主張しているくせにその言葉を否定するのは願望からだ。
「も、桃は、『食べ物』にしか興味ないんじゃないの……?」
桃の告白を断る様子を見たのはほんの少ししかないけど、そのどれでも「何それおいしいの?」が常套句だった。
おいしいの?なんて食べ物に使われる言葉以外の何ものでもない。つまり、桃は恋愛に興味なんてないわけで……
「ん?俺が興味あるのも関心持つのも『おいしいもの』」
「……うん?」
普通に返されたけど、それって食べ物とどう違うのか……
困惑するあたしに気づいたのか、くつくつと喉の奥で笑う桃。なんだかバカにされているような気がしてあたしは桃を軽く睨んだ。
「あー、ほんっと、ハナはかわいい」
「(かわ、かわいい……!?)」
「くっ、かわいすぎて……骨まで食らいつくしたい」
「!!?」


