代わりに感じたのは柔らかなぬくもり。それが例え一瞬のことだったとしても、呆気に取られて動きを止めるのには充分だった。
「それ以上言うのは許さないよ」
ビクリ、体が小さく跳ねる。それは桃の声が少し非難するような音を含んでいたからかもしれない。
「ねぇ、ハナは俺にいろいろ言ったけど、それを言いたいのは俺の方だよ?」
「、え……?」
どういうこと?とあたしが言う前に桃ははぁ、小さなため息をこぼして言葉を紡いだ。
「ハナの方こそ俺のこと異性として見ないし、全然興味ないって態度してるし。俺が他の女子から告白されたときだってけろりとして動揺する素振りさえ見せないし、他のやつらと仲良くしてるときは満更でもなさそうで、俺がいつもハラハラして見てたのだって気づいてないでしょ」
「あ、えと、」
「いつもいつもどうすればハナが俺から離れないか模索して、どうすれば俺を見てくれるのかで頭いっぱいにして、いつになればハナとこうやって触れあえるのか発狂しそうなぐらい考えてたのなんて、ハナは知らないでしょ」
びっくり、した。桃が言っている言葉に。
だって、そんな…自惚れてしまう。
あまりのことにさっきまで流していた涙は引っ込んでしまった。


