全てのことに於いて、あたしは他の人よりも特別な立ち位置で。でもそんなのはあたしがただの幼馴染みだからだ。それ以上でもそれ以下でもない。
それを理解していても、心の奥底では違う解釈を期待していた自分は浅ましくておこがましくて、なんとも滑稽だ。それなら桃に告白してきた子の方が何倍も素敵。
あたしは幼馴染みという立場に甘えてわざとその意味を履き違えて桃の隣にいたんだもん。負けると分かっている試合には立ち向かわず、惰性で桃の隣にいた。
でも、
「も、いっ……あた、し、やめる、から……」
毎回毎回、舞い上がった心を自分で嘲笑ってきた。そんなの特別でもなんでもないってせせら笑ってきた。
でもこんなことをされたら、そうやって言い聞かせていられるのも長く続かない。続くわけがない。
触れてくる温度を、力強さを、掠める匂いを、感触を、体に響く声を、甘い言葉を。
知ってしまえば、あとは堕ちていくだけ。
そこにいくら制御装置を置いても、注意して危険に備えても、そんなものは屁の役にたたない。
増す想いは、自分自身を傷つけていたぶる棘にしかならない。
「何をやめるの?」
「あたし…もう、桃の隣にはっ」
叫ぶように言ったその続きは、言葉にならなかった。


