肌に感じる吐息と、柔らかなぬくもりにピクリと体が反応する。頬や顎に触れた髪がくすぐったかった。
そのうち少しザラリとしたものが首や耳の裏を這い、ゾクリと背中に震えが走った。耳朶を軽く食まれ、その奥にピチャリと濡れた音が響いた。
「、っ……、…」
何をされているかなんて明白で、だからこそどうすればいいのか分からない。
だって、あたしの上にいて今こんなことをしているのは『あの』桃なのに。どうしてあたしにこんなことをするんだ。
抵抗も何もできないまま、体に走る震えを逃がすために息を吐く。それがやけに湿っぽくなったのは多分気のせいだろう。
絡めていた手が離され、桃の手はあたしのコートのボタンをゆっくりと外し始める。どんどん進んでいく行為に泣きそうになった。
「も、も………」
呼んだ声は思った以上に頼りなかったけど、近くにいた桃には聞こえたらしい。
解放された手は力が入らなかったけど、桃の胸元を押すと簡単に離れた。
意志とは関係なく涙で歪んだ視界には、ムカつくぐらい綺麗な男の人が映っていた。
それでも、あたしを見つめるその真っ直ぐな瞳は変わらなくて。ツン、と鼻の奥が痛くなった気がした。
「、分かんないよ……」
あたしには桃が分からない。あんなに長い間いっしょにいたのに……幼馴染みなのに。
桃のことが分からない。


