は?何それおいしいの?





「あっ、ちょっ、待って」



さっさとくつを脱いで上がる桃だけど、こっちは簡単に脱げるようなくつじゃない。しかもまだ腕は掴まれたまま。


というかなぜまだ掴んでいるんだと思いながら、一度腕を放してと言おうと口を開くが、その前にふわりと体が浮いた。



「はっ、え!?」



何!?とパニックになるあたしなんてなんとも思っていないかのように桃はあたしを抱えて一直線に階段に向かって行った。


と、というか何これ。なんでこんなことになってんの。


全く以て意味が分からなかったけど、ただこの状況はいただけない。こんなの稔にでも見られたり、いや知られたりでもしたら笑われるに違いない。



「桃っ、下ろしてよ…!」


「ダメ」



いやダメとかじゃなくて下ろしてほしいんだけど。


暴れて無理にでも桃の手から逃げようと思ったが、階段を上る度に伝わる揺れに怖じけづいてしまう。普通に怖いし、ここから落ちたら絶対痛いよね。


と考えてしまって、逃げるどころではなく逆に桃にしがみついてしまったけど、これは通常の反応であり、あたしだけがこういう行動に移すってわけじゃないと思う。……多分。


とりあえず借りてきた猫よろしくおとなしくしてみる。どこに行くんだろうとまぁ薄々予感はしていたけど、予想通りというか、桃は自室の扉を器用に開けてあたしをベッドに下ろした。


開けたままの扉を閉めに行っているときも無言。いつも口数は少ない方だけどここまでくると怖いっす。