は?何それおいしいの?





視線をずらせばそこには少し息の上がった桃の姿があった。



「なんで……?」



どうして桃がこんなところにいるんだ、と頭の中に「?」が浮かぶ。


目を丸くしているあたしとは違い、桃はあたしを見つめると何かを辿るように視線を滑らせてなしのん兄に目を向けた。


そのときむっとした表情に見えたのはあたしの気のせいだろうかと思ったけど、長年いっしょにいた経験からの雰囲気はそれを誤魔化すことができない。……理由は不明だが何かしら機嫌がよくないらしい。



「お迎えも来たことだし俺は行こうかな」



カタリと小さな音を鳴らして立ち上がるなしのん兄。その際ほんの少し引っ張られたことでまだ手を握られていたのかと思ってしまった。


これは手を抜き去ってもいいのだろうかと考えているとパチリとなしのん兄と視線が合う。


瞳の奥を楽しげに揺らしたなしのん兄は本物の王子さまもびっくりする優雅な動作であたしの手に顔を近づけ、ちゅ、と軽いリップ音を立ててからあたしの手を放した。


常軌を逸した行動にポカンとしてから、ワンテンポ遅れて脳がそれを理解し、顔が熱くなった。


なんだ今の。すごく紳士だったんだけど。めっちゃ王子さまっぽかったんですけど。


不覚にもキュンとしてしまったけどあんなことされたら誰だってときめくと思う。しかもその動作のなんとしっくりくること。本当はさる国の王子さまなんじゃないかこの人。



「じゃあね実花ちゃん。お付き合いの申し込みは保留でいいから」