「それ以上のものなんてないよ。だって、それが唯一無二で1番大切なものなんだから」
「んー……」
じゃあどうすればいいと言うのだろう。どんなに頑張っても戻ってこないし、それ以上のものを得ることもできない。
だとしたら納得するしかないってことなのかな。でもそれは嫌だなぁ。
「だから、早く―――てよ」
「?」
考えごとをしていたせいか桃の言葉を聞き逃してしまって何を言ったのか分からなかった。
「桃?」
「今でも十分甘そうで、いい匂いで、柔らかくて、食べたくなるぐらいおいしそうで、それでも我慢してるのに……他の誰かに食べられる?そんなの、許さないよ」
「ちょっと、桃?」
何を言っているの?
困惑しながら後ろを振り返ろうと体を捩るけど、腰がガッチリとホールドされて動くに動けない。
でもこのまま振り返ったとしてもこの距離……顔合わせたら恥ずかしさのあまり死ぬかも。
「早く色づいて、熟れて、おいしくなって、食べ頃になってよ。他の誰かに食べられる前に」
「っ、」
ちゅ、と耳に羽根のように軽い音が届いた。それと項に感じた柔らかい感触……ピキリと体が固まった。
い、いい今、こいつ何を……?!


