「あたしお風呂入ってくるね」
今日はももの香りよーというお母さんの声が後ろから聞こえた。
今お母さんはなぜか入浴剤にハマっている。多分ももの香りってそれのことだ。
でももともとあたしのシャンプーってホワイトピーチの香りなんだけど。どれだけももの香りが好きなんだ。
はははは、と笑いをこぼして自分の部屋から着替えを持ち、脱衣場に向かう。
しっかり鍵を閉めたことを確認してからバサリと服を脱いだ。
「うわ、本当にももの香り……」
湯気といっしょに漂ってくる甘い香り。これに入るであろう稔とお父さんが少し気の毒に感じる。
だって乙女感丸出しだし。でもお父さんも稔も、お母さんに強くものは言えないからなぁ……言ったが最後、どんな制裁が下されるか分からない。
軽く体を洗い流してから少しピンクがかったお湯に入ると、ぴちゃりと水面がゆらゆら揺れた。
しばらくその香りと温かさを楽しむ。
そういえば、今日学校でなしのんに「明日のお昼1時にみーなの家行くね!」って有無を言わさない顔で言われたんだよね。
なしのんから聞いたのだと合コンは3時からって言ってた気がするんだけど……もしかして合コンの心得とかレクチャーしてくれるんだろうか。
うーん、分からない。
まぁいいか、と深くは考えずにあたしは湯槽から立ち上がった。


