「ただいま」
「あら、お帰りなさい。桃也くんは?」
「1回家に帰ってからくるって」
そう、と言ったお母さんを背にあたしは自分の部屋へ向かう。
カバンを置いて楽な服装に着替えて下に行けばお母さんがご機嫌で料理をしていた。
「何か手伝うことある?」
「あら、じゃあお母さんお風呂行ってくるから大根すりおろしてサンマ焼いておいてくれる?」
「分かった」
よろしくねー、と笑顔のお母さんに、はいはいと返事をしながらあたしは冷蔵庫から大根を取り出した。
しゅこしゅこと大根をおろしていれば玄関の開く音がして。時間的にはまだ早いけど桃かな。
「ただいまー」
「あ、お帰り」
「『あ』ってなんだよ」
「あれ、ハナ1人?」
うん。予想通りだったけど弟の稔(みのる)もいっしょにいたことは予想外。
「お母さん今お風呂だから。というか稔いつもよりはやくない?」
いつもは7時ぐらいに帰ってくるのにまだ6時前だ。もしかして部活サボったのか?
じと、とした目で稔を見るとデコピンされた。こいつ……大根おろしの汁目にぶっかけてやろうか。
「姉ちゃんは分かりやすすぎ。言っとくけど、今日はコーチが急用で来れなくなったからはやく終わったの」
冷蔵庫から麦茶を取り出しながらの言葉に「へー」とだけ返しておく。


