「すごい!!こんなの初めて見た!!」
その景色を見た瞬間、千鶴は大きく目を見開き、興奮気味の声を出した。
『そう?』
「うん!!テレビのドラマとかでよく出てくるよね!!」
彼女は時々、真剣にこんな感じの子供っぽいことを言ったりした。
『あはははっ……あそこに座ろうよ』
僕はちょっと先に見えた階段に近づいて行った。
「どうして笑うの?」
彼女の声が後ろから聞こえた。
『千鶴って真面目に面白いこと言うよな』
「……面白いこと?」
僕は階段に腰を下した。
千鶴は隣でつっ立ったままだった。
彼女の靴が目に留まった。
千鶴は今日もスニーカーだった。
少し長めのズボンの裾がそのスニーカーにかぶさっていた。
彼女の服装はいつだってカジュアルで少年っぽかった。
とても思春期真っ盛りの女の子には見えない。
でも、それはそれで千鶴にはピッタリの服装だった。
僕は無言で、すぐ傍で立ったままの彼女を見上げた。
「これっぽっちも面白くないんですけど?」
そう言いながら彼女は僕の隣に座った。

