虹色のラブレター



「ねぇ、ここ……」


そう言って彼女は広げた地図に指をのせたまま、僕に差し出した。

僕は彼女の指先を見た。


『山?……展望台?』


そう聞くと彼女の表情はパッと明るくなった。


「うん、帰る前にここからの景色見てから帰ろ?」


『あっそれいいかも!!』


「でしょ?」


彼女は笑顔を見せた後、視線を地図に戻して「わかる?」と訊いてきた。

僕も視線を地図に移し、現在地からのルートと距離を調べた。

今度はさっきの海のように簡単ではないように見えたが、僕は「まかせて」と言って車を再び走らせた。




美貴との時間がいつの間にか増えていった。

思い出も増えていった。

僕と彼女の思いはすれ違っていたけれど、彼女と一緒に過ごした時間は、僕の心に忘れられない記憶として残っていったのだ。





道は思った以上にややこしかった。

それでも地図と標識を頼りに僕は車を走らせた。

途中、何度か道を間違えながら、出発してから30分くらい経ってようやく展望台の入口に辿り着いたとき、陽はすでに暮れかけていた。

そこから更に車を走らせて、展望台の駐車場を目指した。

道は確かに細かったが、山道とは思えないほどきれいに舗装されてあり、わずかな時間で展望台に着くことが出来た。

そこはただの広い空地のようだった。

間違えたのかとも思ったが、そこには確かに"展望台"の看板が立ててあった。

空地の奥に木で作られた柵があり、そこまで車を近づけていくと、そこから市内の景色を見下ろすことが出来た。

そこに車を停めていいものかどうかはわからなかったが、駐車スペースというのも特になかったので、僕は車を邪魔にならないような場所に適当に停めた。