涙まじりのその言葉を聞いた時、僕の胸に激しい痛みが走った。

彼女の悲しみが、彼女の手の平を伝って僕の方に流れ込んでくるようだった。

僕は瞼を閉じたまま堪えていた。

心臓の音がより騒がしくなっていた。

気付いたら布団の中で、力一杯の握り拳ができていた。

僕が堪えていたのは涙だった。

きっと美貴は、僕がまだ眠っていないことを知っていたに違いない。

それでも僕は眠ったふりを続けた。

それが今の僕に出来る、彼女への精一杯の優しさであり、気遣いだった。


でもその時間は長くは続かなかった。

僕の閉じられた瞼から流れ出た涙が、彼女の手の平と僕の頬の縁をなぞった時、彼女はそっと手を離した。

それからベッドのきしむ音がして、少し傾いていたベッドが元に戻った。

少しの空白の後、おやすみなさいと囁くような美貴の声が隣のベッドの方から聞こえた。