「いらっしゃい……今日は?」


注文を取りに来たのは、僕たちがこの喫茶店に来るようになる前から、ここでバイトをしている女の子だった。

彼女は背が高くてスタイルもよく、いつもストレートに長く伸ばした綺麗な黒髪をなびかせながら歩いていた。

挨拶を交わすくらいでほとんどまともに話はしたことはなかったが、その容姿と表情、仕草で、彼女が僕よりも年上であることに、僕は初めて彼女を見た時から気付いていた。




『こんにちは。あの子……新しいバイト?』


「あ、はい。昨日からなんですけどね……まだ慣れないみたいで」


『ふ~ん、高校生?』


「……行ってたら高3だと思うんですけど……なんだか辞めたみたいだから」


『1コ下か……』


「気になります?」


彼女は冷やかす様な目で僕を見て笑った。

ちょっとムッとして視線を逸らし、そっけなく答えた。


『別に……あ、いつもの”アメリカン”アイスで』


「は~い……あ、でも彼氏いるみたいですよ?」


『あ…そ。貴久は?』


メガネを掛けた貴久は、ちょっと離れた厨房の方を見ながらそこに居る彼女(新しく入ったバイトの子)を必死で目で追いかけている様子だった。


「え?……あ、俺も同じで!!」


『おい……』


「りょう~か~い」


そう言いながら、彼女は伝票を僕たちのテーブルに無造作に置いて、厨房の方に歩いて行った。