『え?いや……』
僕は言葉を濁した。
確かに付き合ってるわけではないから、僕が選んだシングル二つという選択は決して間違ってはいない。
でもここではっきりと否定してしまえば、彼女の女性というプライドを傷つけてしまうような気がした。
『いや……僕もダブルでもよかったんだけど……』
「でもシングルにしたの?」
『うん……』
「それは……友達だから?」
『そう……』
「男と女としてじゃなくて……いい友達?」
『うん、だって……やっぱ、付き合ってるわけじゃないから……』
「じゃ、一緒のベッドだったら?セックスするの?」
『……』
彼女の率直な質問に、僕は何も答えることができなかった。
こんなに矛盾した話はない。
ストレートな彼女の言葉に答えられない僕は、そのことを認めていることになる。
そこでエレベーターは止まった。
「ごめん……また困らせちゃったね」
『僕は美貴さんのこと……好きだから。……こうやって一緒に居れて楽しいし』
そう言ってすぐ僕は後悔をした。
その言葉は彼女のことを、僕が友達だと割り切っている裏付けになる言葉だった。
彼女はいつものように、あははと声をだして笑った。
「私がそれでもいいって言ったのにね」
そう言って彼女は、ごめんねというように舌を出した。
そして、おもしろい冗談を聞いたかのようにもう一度笑って見せた。

