虹色のラブレター


宿泊の手続きをしている時、フロントの人に聞かれた。


「ベッドはどうなさいます?ダブルの部屋か、シングル二つの部屋か……どちらも空きがありますけど」


僕と美貴はほぼ同時に無言で顔を見合わせた。

彼女は恥ずかしいというように、口に手を当てて小さな声で「智が決めて」と言った。


『え?じゃ……シングル二つの部屋で……お願いします』




フロントでの手続きは僕が思ってた以上に簡単に終わった。

僕はもっと何か大変な作業を想像していた。

例えば身分証明証を出したり、誓約書を書かされたり、よく分からないけどその他にも色々……でも、実際はそういうことは全くなく、ただ名前と住所を書いて車の鍵をフロントに預けるという簡単な手続きだけで終わった。


部屋の鍵を受け取った僕たちは、そのままエレベーターに乗り込んだ。


「私はダブルでもよかったのに……」


エレベーターの階数表示が上がっていくのを見ながら美貴はそう言った。