「どこって?」
彼女はエレベーターのボタンを押しながら不思議そうな顔で僕を見た。
『いや……、まずどこに行くのかな?って』
ドアが閉まってエレベーターは上の階に向かって動きだした。
僕の不安はますます増していった。
「フロントだよ」
美貴は当然でしょ?というような表情をみせた。
『そ、そうだよね……』
「もしかして……初めて?」
彼女は首をかしげて、小さな子どもに聞くように僕の目を見て言った。
『ううん……』
一度強がってみせた。
でも、すぐに首を横に振って素直に打ち明けた。
『僕、よくわからないから……美貴さんにまかせるよ』
「りょ~か~い、まかせといて」
彼女は笑いながらそう言ったけど、決して僕を馬鹿にしたような笑い方ではなかった。
むしろ、「お姉さんに任せなさい」というような感じだった。

