美貴の提案で、今晩は駅のホテルに泊まろうということになった。
駅のホテルなら飛び込みでもすぐに部屋を用意してくれるらしい。
もちろん僕たちは付き合ってはいないけど、男女のカップルなのだからラブホテルでも泊まることができた。
もしかしたら、その方が安く泊まることが出来たかもしれない。
でも、僕はそういう所に今まで一度も泊まったことがなかった。
だから、初めから僕の宿泊の選択肢の中にその考えはなかった。
彼女の頭の中にもその考えはなかったようだった。
記念公園は市の中心にあった。
だから、そこから駅まではさほど遠くはなかった。
少し慣れてきたのか、今度はすんなりと駅に着いた僕は、駐車場を探しながらその大きな駅のロータリーを一周した。
さすがに県の中心で、新幹線の停車駅でもあるその駅は、外から見る限りかなり大きく見えた。
そこで僕は一つ大きな発見をした。
路上駐車は斜め止めにするらしい。
たいしたことではなかったが、初めて車で遠出をした僕にとっては、それも地元では見られない……新鮮で大きな発見の一つだった。
それからすぐに僕は駅の地下にある駐車場を見つけた。
少し緊張しながらも僕はそこに車を入れた。
薄暗くて静かな駅地下の駐車場は、少しの音でも大袈裟に響かせる。
その雰囲気が余計に僕を緊張させた。
美貴は僕が車を停めるなり、何のためらいもなく車を降りて、早く行こうと僕を急かした。
僕には何もかもが初めての経験だった。
車での遠出、宿泊、しかもただの宿泊ではない…女の人と二人でホテルに泊まろうとしているのだ。
どうしていいのか全くわからなかった。
ここに車を停めてまずどこに行くのだろうか?
フロント?
持っていくものは?
本当に泊まれるのだろうか?
もし泊まれたとして……いくらかかるのだろうか?
そんな僕の不安をよそに、エレベーターを見つけた彼女はそこまで駆け足で行き、振り返って僕に手招きをした。
「早く」
『う、うん』
僕は不安でいっぱいだった。
「どうしたの?」
『え?いや……ど、どこに行くの?』

