「ねっ××記念公園!!ここ行ってみようよ」
『うん、りょ~か~い』
僕たちが目的の××県に入ったのは夕方くらいだった。
美貴は××県に入るなり、途中のサービスエリアから取ってきた地図を膝の上に広げて、その記念公園に行きたいと言ってきた。
僕もその場所には興味があった。
よそから来た僕たちが行ってみたいと思うその公園は、全国的にも有名な観光スポットだった。
僕は地図と標識を頼りにその場所を目指した。
初めてで慣れない土地に少々手こずりながらも、なんとかその公園に辿り着いた。
目的の場所は県の中心部、××市の中にあった。
車から降りた僕たちはとりあえず公園を散歩しながら、長旅の疲れを癒しつつ観光しようということになった。
「ここに来たのは初めて?」
『うん。っていうか車で旅行とか初めてだし……こんなに遠くまで来たのも初めてだよ』
彼女はいつもと変わらない笑顔で声を出して笑った。
「そうなんだ、なんか嬉しい」
『どうして?』
「智の、初めての旅行の相手が私で……智はどう思ってるかわかんないけど」
そう言って、彼女は笑顔を見せてから両手を後ろに組んで、スキップをするように少し歩くペースをあげた。
僕はそんな彼女を追いかけた。
僕たちの距離は確実に縮まっていた。
偶然でもその手が触れてしまうほど近くに彼女はいた。
でも、僕たちはそのことに気付きながらも、この微妙な距離を保ち続けていた。
僕は彼女に気遣い、それを知っている彼女もまたそんな僕に気遣っていた。
そして、お互いの気持ちはそこからしばらく動けなくなっていた。

