貴久と仲良く出来た理由は、彼の性格にもあった。

自分というものをあまり持っていなくて、何故か僕に慕っていた彼は、明らかにいつも僕に合わせて行動していた。

そして、普段からも気遣いの出来るいい奴で、時々一人でバカなことを言っては独特の笑い方で周りを和ましてくれた。

だけど、そんな誰にでも好かれそうな性格の彼だったが上司には若干嫌われていた。

高校を出たばかりだったからなのか……素直に「はい」と返事が出来ない奴だった。






『あの子、新しいバイトみたいだよ』


「やっぱり?よく見えないけど……」


『メガネかけたら?』


「そうする……」


貴久がポケットから取り出したメガネケースをテーブルに置いた時、その隣にお冷が二つ置かれた。