虹色のラブレター


それから僕たちは、もう一度サービスエリアの中に入った。


お風呂は我慢するしかなかったが、歯磨きと洗顔くらいはさすがにしたい。

でも、旅行なんて行くつもりじゃなかったから、当然、洗面用具もなにも持っていなかった。

とりあえず歯ブラシやらタオルやらを売店で買い揃え、僕たちはトイレに行った。

サービスエリアのトイレで歯磨きや洗顔をしている人は、長距離トラックのドライバーも含めさほど珍しいことではない。




僕が目を覚ました時、彼女は何を考えながら外を眺めていたのだろうか?

それを考えると、僕の気持ちはますます複雑になった。


ーーーこんなことしてていいのかな。美貴さんの気持ちは知ってるのに……。


僕は彼女のことが好きになれそうな気がしていた。

というよりも、この時もうすでに僕は彼女のことが好きになっていた。

一緒に居ると楽しいし彼女の笑顔には癒される……。


だけどそれは、友達として……気の合ういい女友達としてだ。

そのことに僕は確信を持ち始めていた。


ーーー僕は美貴さんのことが好きだけど……やっぱり付き合うとか、そういうのじゃない。




彼女よりも先にトイレから出てきた僕は、その近くにあったベンチに座って、美貴が用事を済ませて出てくるのを待った。

彼女がそこから出てきたのは、僕がタバコを一本吸い終わった頃だった。



「ごめんね、待った?」


『ううん、いいよ』


そう返したが、僕は彼女と目を合わすことが出来なかった。

美貴は僕のそんな些細な変化に、すぐに気付いたようだった。