虹色のラブレター





*




僕が目を覚まして隣を見た時、美貴はすでにに倒していたシートを元に戻して、何かを考えているかのように窓の外をじっと眺めていた。

しばらく、僕はそんな彼女の横顔を見つめていた。

でも、彼女は僕の視線に気付く様子もなければ、ピクリとも動くこともなかった。

何を考えているのかはわからなかったけど、彼女の意識は完全にその中にあった。

あっさりと声をかけづらくなった僕は、わざと「う~ん」と声を出して、寝起きのフリをし、両手を頭の上で組んで軽く伸びをした。

それに気付いた美貴は、意識を戻して僕に「おはよう」と言った。

僕はシートを元に戻して、首を何回もまわしながら「おはよう」と返した。


「よく眠ってたね……疲れてたんでしょ?ごめんね、せっかくの連休なのに……」


『ううん、そんなことないよ、大丈夫』


「だって……」


『何?』


「寝言言ってたよ?」


『えっ!?』


驚いた僕はとっさに美貴の方を見た。


でも、一目見てすぐにわかった。

それが彼女の冗談であることが。


『嘘ならもっと上手につかなくちゃね』


僕が笑いながら言うと、彼女もいつものように、あははと声を出して笑った。

僕はいつの間にか、そんな彼女の笑顔に癒されるようになっていた。


「どうしてわかったの?」


『見たらわかるよ』


「え!?なんで!?」


『顔に書いてある』


彼女はルームミラーに自分の顔を映して、不思議そうな……納得のいかない様な表情を見せた。


「何も書いてないんですけど?」


『あはは、美貴さんは透明なんだよ』


僕はそう返した。