行き先が決まると僕たちのテンションは一気に上がった。

カーステから流れてくる曲に合わせて大声で歌ってみたり、普段ならそんなに盛り上がることのない"二人しりとり"で訳もなく盛り上がったり、更には窓から見える何気ない街の風景でさえも笑いのネタになった。


高速道路には乗ったものの、地元を出発したのが夜中だったから、僕たちは目的地までの途中のサービスエリアで車を停めて一泊しようということになった。




『こういうところでのご飯はやっぱり……定番のうどんでしょ?』


サービスエリアのフードコーナーの食券売場の前で、僕たちは夜食を選んでいた。


「やっぱり?それじゃうどんでいっか」


厨房のおじさんを呼んで僕はうどんを二つ注文した。

ポケットから財布を取り出し、二つ分の会計を払おうとした時、美貴も鞄から財布を取り出していた。


『いいよ、僕が払うから』


「えっ、いいよ!!私が払う。私から行こうって誘ったみたいなものだし」


彼女は嘘はつけない。

その表情は本気で申し訳なさそうだった。

無理におごるなんて言うと、余計に彼女に気を遣わせてしまうと思った僕は言った。


『じゃ、割り勘で』


「うん、ありがとう」


『ありがとう?』


「うん、私が出すつもりだったから」


『自分の分払っただけだよ』


そう言って笑うと、彼女は「でも……じゃ、じゃあ交通費とかは私が出すから」と申し訳なさそうに言った。

可笑しくて、僕は笑いながら言った。


『いいよ、僕の車なんだし……』


「いいことないよ!!だから言ってるじゃない……私が誘ったみたいなものなんだからって」


『そうかも知れないけど……いいんだよ、僕も行きたいって思ったんだから』


「ほんとに~っ!?」


彼女の声は急にテンションが上がったように大きくなった。


『ほんとだって……じゃ、全部割り勘で』


「うん、わかった……ありがとう」


彼女はそういう人だった。