海の展望台から、花火大会が行われている場所まではかなり離れていた。

とてもここから歩いていけるような距離ではなかった。

僕たちは急いで車に戻り、近付いていけるところまで車で行こうということになった。

思った通り、花火が車の窓からだんだんと大きく見えてくるにつれ、道路を走る車の数が増えてきた。

僕は渋滞に巻き込まれる前に車をパーキングに停めた。


僕の予想は的中した。

道路はすぐに動かない車でいっぱいになった。

僕たちはそんな渋滞の列を横目に、並んで歩いて花火大会の会場を目指した。


花火大会の会場が近付くにつれ、ドンッドンッという打ち上げ花火の音が時間差で聞こえてくるようになった。




「わぁ……綺麗……」


彼女がそう言うまで、僕は花火を見ながらも頭の中では全く別のことを考えていた。


――私のために我慢して


それはすごく悲しい言葉だった。

彼女は自分の痛みよりも、僕の痛みを気遣っているのだ。

彼女が悪いとか決してそんなことではないのに……それでも彼女は今も、自分の痛みは自分の中に閉まい込んで、僕に精一杯の強がりを見せている……。




「ねっ早く行こ!!もう終わっちゃうかも知れないよ!!」


歩くペースを上げた彼女は、とっさに僕の手を取った。

その瞬間、僕の胸に強い痛みが走った。


のそのそと歩いていた僕は、そんな彼女に引っ張られるようにペースを上げた。