『じゃ、千鶴はもう……』 彼女は視線を落とし、僕が握り締めていた千鶴の赤い手帳を見つめてから顔を上げた。 そして、一度人差し指で目の縁に溜まった涙を拭って、僕に微笑んだ。 「あなた……愛されてたのね」 僕は黙って頷いた。 『千鶴に……もう一度会いたい……』 「私も会ってみたい……その手帳を読んで、私も千鶴ちゃんのことが好きになったの」 『うん……ありがとう』 「きっと……素敵な人なのね」 僕は頷いた。 何度も、何度も頷いた。