虹色のラブレター


僕は今日が地元の花火大会の日だということをすっかり忘れていた。

もともと行く気はなかったし、一緒に行く相手も居なかったからだ。

でも、打ち上げ花火が嫌いだとかいう訳ではなかった。

どちらかというと好きだった。


美貴は僕に気を遣ってのことなのか、「見に行こう」と誘ってきた。

花火には行きたかった。

でも、僕はすぐに返事が出来なかった。


美貴の気持ちを知ってしまった以上、軽はずみなことはできない。

彼女の心につけてしまった傷を、これ以上大きくしたくなかった。

しばらく黙っていた僕を見て、彼女は僕の気持ちに気付いたように「いいんだよ」と救いの言葉を口にした。


『……いいって?』


「自分が悪いことをしたぁ……とか思わないでね!!」


『でも……』


「どうせ黙ってたってバレちゃうんだから……それでもう会えなくなるとか……その方がよっぽど辛いよ」


確かに彼女は疑うことも隠すこともできない……何でも透き通って見える水晶のような人だった。

ならば黙っていても、彼女が言うように僕に対する気持ちは見えたのだろうか……。

こんな僕にでも見えたのだろうか……。