その言葉に隠された本当の意味に辿り着くには、かなり遠回りな言葉だった。
でも、僕はわかっていた。
わかっていたから、僕は答えられなかった。
僕だって美貴とじゃなかったらここに一緒に来たりはしない。
でも、彼女が言う「智とだからここに居るの」という言葉と、僕が言う「美貴とじゃなかったらここに一緒に来たりはしない」に隠された本当の意味が違う。
僕は美貴に恋をしていない……。
好意を抱いているのは事実だったが、それは恋と呼べるものではなかった。
いつから?どうして僕を?そんな疑問が頭の中を駆け巡った。
それと同時に僕は後悔をした。
僕の軽はずみな行動が彼女を傷付けてしまう……。
彼女の透き通るほど綺麗な……水晶のような心を。
『僕は……』
そう言いかけた僕の言葉を遮るように、彼女は首を横に大きく何度も振って「いいの」と言った。
『え?でも……』
「本当にいいの。だって聞いたらもう会えなくなるでしょ?」
僕は彼女が自分を犠牲にして、精一杯の勇気を振り絞って言ってくれたであろうその言葉にさえも答えられずにいた。
僕は正直すぎた。
そんな融通の利かない自分に腹が立った。
「あ……ねっ見て!!」
彼女は目を大きく見開いて、僕の後ろの空を指差した。
「花火上がってる!!」
その日は地元の花火大会の日だった。

