虹色のラブレター


それから少しの時間で太陽は水平線に沈んでいった。

いつの間にか点いていた外灯は、ベンチに並んで座る僕たちをほんのりと照らしていた。


「どうして?ここに来たの?」


『今日は天気がよかったから……さっきの空が見れるかな?って思って……変かな?』


美貴は首を横に振って「そうじゃなくて」と続けた。


「どうして私と一緒に来たの?ってことよ」


『それは……』


僕は言葉を詰まらせた。

彼女はその言葉の続きに何かを期待している……

少なくとも僕には、その時の彼女の表情がそういう風に見えた。

でも、僕にはそんな彼女の期待に応えてあげられるような気持ちはなかった。

だから僕は黙ったまま……この場面に合ったいい言葉を見つけられずにいた。

僕に向けられた彼女の視線に、僕は答えられずにいた。


やがて彼女が先に口を開いた。


「私は……」


何かを言いかけて、彼女は僕から目を逸らした。

そして、太陽が沈んでいった水平線のそのまだ先の方に視線を移した。

そこに何かが見える訳ではない。

でも、彼女の視線はそこにあるべき何かを探しているように見えた。


「……智とだからここに居るの」