確かに泡風呂だった。
よく漫画とかで出てくるけど、本物の泡風呂を見たのは初めてだったので、僕も少し楽しい気分になりながら、千鶴があんなに興奮していた理由がわかるな、と思った。
僕はジェットバスのスイッチを入れて、さらに泡立たせて湯船に入った。
一人になると、やっぱりいろいろ考えてしまう。
千鶴はどんな思いで、今日僕とホテルに来たのだろう。
僕がお風呂から出て……その後、一晩どうするのだろう。
確かにいつも一緒に寝泊まりしてて、それは同棲に近いものがあるけど……ここはラブホテル。
泊まる場所が違うし、目的も違う。
そうやって僕があれこれ考えてても、千鶴はここに来てからもいつもと変わらない。
普段、僕がよく知ってる千鶴のままだ。
考え過ぎ……。
だけど、そうやってあれこれ考えてしまうのは、僕が千鶴のことを好きだからだ。
それは裏を返して言えば、千鶴は僕のことをやっぱり友達としか見てくれていない、ということになる。
だけど……。
わからない。
考えれば考えるほど、わからないことだらけだ。
でも、そんなことは今に始まったことじゃない。
僕は千鶴のことを何も知らない。
誕生日すら知らない。
僕が知っているのは、ただ、目の前に居る千鶴という存在だけなのだ。

