今まさにこの場所から見える空はそんな空だった。
”太陽が半分沈んだ夕焼け空”
『その時の情景が記憶に焼きついててさ』
「うん」
『今でも好きなんだ。この空が……』
「智の自慢の空か……綺麗だよね……。教えてくれてありがとう……」
彼女は真剣な目でその夕焼け空を見上げながら、そっと囁くように言った。
『砂浜はもう埋め立てられちゃってないけど……空は今も変わらないよ』
「うん。だから……」
『だから?』
「だから……埋め立てられちゃったこの場所はあんまり好きじゃないんだね。砂浜のままがよかった?」
『……うん』
空を見上げたまま、二人の間に少しの沈黙があった。
僕は思い出していた。
あの頃の綺麗な砂浜と、ずっと一人ぼっちだったあの頃のことを……。

