『でさ、海からの帰り道はいつも……今みたいな空が見えてたんだ。……太陽が半分沈んだ夕焼け空。西の方……水平線からはオレンジ色の空が広がっていて、そこから東の方に向かってだんだんと蒼く暗くなっていく……。あの頃の僕は、いつもその空を見上げながら家に帰ってたんだ』
彼女は何も言わず、ただじっと僕の方を見ていた。
『あの砂浜とこの空が大好きだった……。この空が見れるのはほんの僅かな時間だけだからさ……それを知ってるのは自分だけなんだって思ってて……。なんかそれが自慢でさ。馬鹿みたいだろ?』
話しながら恥ずかしくなってきた僕は、それを隠すように笑ってごまかした。
だけど、彼女はそんな僕の子供の頃の話も、ずっと真剣に聞いてくれていた。

