『え……あ、いや……』


僕は言葉を濁した。


「まだ、付き合ってるよ。……おやすみ」


千鶴は優しくそう言って寝返りをうち、僕に背中を向けた。




頭では予測出来ていた事実だったが、僕の中には「もしかしたら……」という希望的感情があった。

だから、その言葉を千鶴の口から聞かされたことで、僕は頭を強く殴られたような衝撃を受けた。

けれど、千鶴の声は優しかった。

それは千鶴の僕に対する気持ちの表れなのだろうか。と思う。

どっちにしても事実は受け入れなければならない。

受け入れた上で、僕は答えを出さなければいけない。

いつまでも、この生活を続けるわけにはいかない。




僕は気持ちを落ち着かせてから、ずっと向こうを向いたままの千鶴のその小さな背中にそっと声を掛けた。


『……おやすみ、千鶴』